取引先の信用調査を、無料の公的サイトだけで行う手順
新しい取引先と契約する前に、その会社が実在するか、事業を続けているか、問題を起こしていないかを確かめます。調査会社の報告書を買う方法もありますが、1社あたり数千円から数万円かかります。ここでは、無料で誰でも使える公的なサイトだけで、どこまで確かめられるかをまとめます。
所要時間は1社あたり5分から10分です。順番は、正式な社名を確定するところから始めます。名前が確定しないと、後の調査がすべて別の会社の情報になるおそれがあるためです。
1. 正式な商号と法人番号を確かめる
国税庁の法人番号公表サイトで社名を検索します。登記されている商号、本店の所在地、13桁の法人番号が出ます。名刺やメールの署名にある社名と、登記上の商号が違うことは珍しくありません。
検索でつまずきやすい点が3つあります。
- 「株式会社」が前に付くか後に付くかで、結果が変わります。「日本」で始まる社名のように、前株と後株の両方の会社が実在する場合は、どちらも試します
- 同じ商号の会社が複数あります。本店の所在地で見分けます。所在地が分からない場合は、請求書や契約書に書かれた住所と突き合わせます
- 商号を変えた会社は、変更履歴から旧商号をたどれます。古い資料の社名で検索して出ない場合は、旧商号のまま探していることがあります
ここで確定した法人番号を控えておくと、この後の調査で会社を取り違えずに済みます。
2. 事業の規模と国の記録を見る
経済産業省のgBizINFOで、同じ社名を検索します。法人番号、所在地、資本金、従業員数のほか、国の補助金の採択、入札の結果、各種の届出といった記録が並びます。記録が1件もない会社もあります。記録がないこと自体は問題ではありませんが、設立から年数が経っているのに国との取引や届出が一切ない場合は、事業の実態を別の材料で確かめます。
3. 決算の数字を探す
上場している会社なら、EDINETで有価証券報告書を読めます。売上高、利益、自己資本比率、現金の残高まで分かります。
上場していない会社でも、株式会社は決算公告を出す義務があります。官報に載せている会社なら、官報決算データベースで貸借対照表の要旨を確認できます。純資産がマイナスになっていないか、前の期と比べて大きく減っていないかを見ます。
ただし、決算公告を出していない会社は多くあります。見つからない場合は、次のように進めます。相手に決算書の提出を求めるか、取引の条件を前払いや少額から始めるかのどちらかです。
4. 行政処分や公表を確かめる
消費者庁の発表には、景品表示法の措置命令や課徴金、特定商取引法の業務停止命令が載ります。公正取引委員会の発表には、下請法の勧告や独占禁止法の処分が載ります。どちらもサイト内の検索で社名を入れて調べます。
処分の公表は数年分が残ります。過去に処分を受けた会社と取引してはいけないわけではありません。処分の内容が、これから始める取引の内容と関係するかどうかで判断します。
5. 倒産と信用の情報を見る
東京商工リサーチのサイトには、倒産した会社の速報と分析記事が載ります。記事に取り上げられた会社だけが出るので、何も出ないことのほうが多くなります。取引先の名前がここで出た場合は、取引の継続を急いで見直します。
6. 直近の動きをニュースで確かめる
最後にニュース検索で社名を調べます。事業の拡大、撤退、人員の削減、不祥事などが分かります。公的な記録は反映まで時間がかかるため、直近の状況はニュースのほうが早く出ます。
調べた内容の残し方
調べた日付、使ったサイト、見つかった内容を記録しておきます。与信の判断を後から説明する場面で必要になります。社内で決裁を受ける場合も、どこまで確かめたかを示せると話が早く進みます。
毎回の手間を減らす
この手順の面倒な部分は、6つのサイトを1つずつ開き、社名を貼り付けて検索し直すところです。表記ゆれのせいで検索が当たらず、前株と後株を入れ替えて試すこともあります。
その部分を省くために、企業リサーチというChrome拡張機能を作りました。Webページ上で社名を選んで右クリックすると、この記事で挙げたサイトの検索結果をまとめて開きます。社名の表記もそろえます。調べた社名と開いたサイトは履歴に残ります。無料版は月10回まで使えます。
この記事の注意
ここに書いた手順は、公開されている情報の調べ方です。信用の判断そのものではありません。取引の可否は、各社の基準に従って決めてください。各サイトの情報の内容と正確さについては、それぞれのサイトの案内をご確認ください。